巨大化

電車に乗っているとき、ふと見た車窓からの風景の中に、
巨大化した自分自身を幻視することがあります。
空には、すでに、数機のマスコミのヘリコプターが飛んでいます。
そして、巨大化した私を取り囲むようにして、大勢の人々が集まっています。
その中には、私の家族や、友人、知人達の顔も見えるようです。
かれらは、私がやけを起こさないようにでしょうか、未来への希望の数々や、
過去の楽しかった思い出を 遥か頭上にある大きな私の顔に向けて、語りかけているのです。
しかし、残念ながら、
その時の私には、彼らが空腹を満たすための奇妙な動きをする獲物にしか見えないのです。

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