空っぽの箱
男は探し物をしていた。家中の箱と言う箱を開いてみたが、見つからなかった。
おまけに何を探していたのかも忘れてしまった。
男は探している間中、自分の身体から豹が出て行くような気がした。
今ごろ、豹は自分の探し物を獲物の小動物をもてあそぶようにしているだろうと思った。
向かいのマンションの少年はこのことを嬉々として親に話すに違いなかった。
男は咄嗟に少年を箱に詰め、押入れの奥に仕舞い込みたいと思った。
そして、次に、少年を捕まえるために、いったん、下に降りて、また昇る長い時間の間に、
全てが、バカバカしくなるだろうと思った。
なるほど、高層マンションはうまくできていると、ここに住み始めてから初めて思った。

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