三兄弟
私が住む町には不思議な三兄弟が住んでいます。
まずは1番上の兄らしき男が勢い良く独楽を回します。
すると、体は大きいが少し幼さが残る2番目の兄が太鼓を打ち始めます。
それに目を奪われていると、いつのまにか1番下の弟が盆踊りのような踊りを始めているのです。
独楽はやがて止まります。
1番上の兄は独楽を拾い上げ、紐を巻き始めます。
その間、あとの二人は死んだようにぐったりと座りこんでしまいます。
そして、1番上の兄が再び勢い良く独楽を回します。
すると、体は大きいが少し幼さが残る2番目の兄が太鼓を打ち始めます。
それに目を奪われていると、いつのまにか1番下の弟が盆踊りのような踊りを始めているのです。
彼らは繰り返します。空はいつの間にか夕焼けになり、やがて、暮れていきます。
私はそれらの一部始終を物陰から見ているのです。
姿を見られる訳にはいけません。
もし、見つかれば、彼等は一目散に駆け寄って、こう言うような気がするのです。
「お兄ちゃん、お帰り。ずうっと、ずうっと、待ってたんだよ。」
そして、私は、「ただいま。兄ちゃんは、もう、どこにも行かないからね。」
と、彼等3人をひしひしと抱き寄せ、涙に咽びながら叫んでいるのです。

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