中央病院

近頃、見慣れた病院の名がいつの間にか××中央病院に変わっているということがよくあります。
子供の頃、月極駐車場が月極という名の会社のチェーン展開だという間違った判断も
成長するにつれ、いつのまにか正しい理解に到達しているという現実から考えて、
焦ることなく、時が熟し、中央病院が何なのか自ずとそれ自身が語ってくれるのを待っているつもりです。
それでも、気になることは気になるのです。
中央とは何の中央なのでしょうか。町の中央なのでしょうか。日本の中央なのでしょうか。
それとも、さらに壮大に宇宙の中央、森羅万象の中央でしょうか。
視点を変えると、私こそ世界の中央だという主張なのかもしれません。
あの偉大なる道を説いた仏陀は誕生と同時に「天上天下唯我独尊」と言ったそうです。
それも一つの中央の主張です。
それにしても、生まれてすぐに言葉をしゃべれるなど我々には及びも付かないことです。

もし、私が生まれてすぐにしゃべれたなら何と言ったでしょうか。
お産の後の心身ともに疲労したなか、子宮の中で練りに練って考えていた崇高な言葉もすっかり白くなってしまい、
どうでもいいようなくだらぬ言葉をポロリと呟いてしまうのではないでしょうか。
そして、それを聞いていた家族は私が成長した後でも、何かことあるごとにそのことを持ち出し、
私の羞恥など無視し、ご近所に聞こえる程の笑い声を笑うのです。
そしてその笑い声は山を越え海を越え、
成層圏をすり抜けて太陽系の果てるところで、優雅な楽を奏でる天女たちの美しい調べとなり、
さらに進んで銀河の果てで、セラフィムとかトローネとか不思議な名の異国の天使達の難解な言葉となるのです。

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