過去
何となくですが、お店に並ぶ商品に目新しいものがなく、
雑誌の写真やレイアウトを眺めると、いつかどこかで見たような既視感の中にいることはないでしょうか。
それはなにも開発者やデザイナーの想像力が減退しているわけではないのです。
世界の物理的な時間がもうすぐ終わろうとしているため、
時間の終わりの壁に跳ね返されイメージの中に過去が潜り込んで来るのです。
大潮の日、いつの間にか水が膝まで濡らしていて、
まだ大丈夫だと油断していると、あっという間に流れにさらわれていくように、
我々は過去の幻視のなかに、それが過去だと気付かぬままに、
溺れていくのかもしれません。
しかし、心配はいりません。
苦しいのは、ほんの一瞬なのですから。

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