違い棚
今回は絵の構図あるいは物の配置について説明させてください。
よければあなたの創作活動の参考にしてください。

まずは左奥から無心に尺八を吹く虚無僧が手前に進んできます。
その尋常でない運動をなんとか食い止めるため、いくつもの違い棚が壁に現れます。
この壁を支えている床に安定をもたらすためゆったりとしたソファーが必要です。
予想以上にそのソファーの重量感のため画面が下に沈むのを
4体の飛行機のようなものの浮遊でなんとか持ちこたえます。
その飛行物体が思いもかけず編隊を組んで左の方を目指すので、
奥に描かれた日本女性が持つしとやかさが今一度画面全体を中央に維持するのです。
そんなこんなでいろいろ考えているうちにも、虚無僧の尺八は容赦なく鳴り響きます。
その響きは全てを引き寄せ、右手前から虚無僧の方への抗えぬ風となって画面を歪めるのです。
その風を視覚化するためにピンクの人型が現れます。
そして、その不吉な風を視覚化することで反作用をよび、画面をようやく中央で釘付けにします。
もし、それと同時に不覚にもあなたがこの絵に釘付けにされて身動きできなくなったなら、
中央やや右ソファーの背もたれの上の白い蛸のようなものに注目してください。
長らく待ち続けた再臨のイエスのようにあなたを小脇に抱え、斜め下へ脱落してくれるでしょう。
あなたは孤独な長い旅から帰り、家族の待つ家を目の前にして、一目散に駆け出すのです。
しかし、しかしです。残念ながら、その夜、
懐かしい匂いのする枕を抱えながら健やかに眠るあなたを母のように包むものは
あの虚無僧の執拗な尺八の響きなのです。

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shelves
Attach shelves to the wall first.
And then build the house.

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