最果て

  
熊がなぎなたを突く
緩く突く
ここは最果てカムチャッカ
熊は寒くて気が狂う


君がくれたマフラーは 今頃、熊が巻いている
小熊は空を見上げて口を開け
ノートルダムの鐘を突く


兄弟

秋の海の波に揺れて、
途方にくれる君は美しい。
そして又、岬の向こうに見える青い青い山の頂きにいて、
錯乱してる君の兄弟も捨て難い。


Control

精神的な歩行を心がける。
雨天突撃。
鶴のように訪問する。
灯篭を見逃すな。
灯篭を見下すな。
灯篭を見捨てるな。
光は君の中にある。

肋骨をゆっくり揺らせてごらん。
まずはそこからコントロールだ。
ツンドラの湿原で
七色の声で鳴く鶴が
恥ずかしそうに顔を隠して
いつまでも君を待っている。 

ダンスのうまい父。
どこまでも歩く母。
それが何なんだ。
今はコントロールだ。


薔薇

一枚のちり紙の下に
籠城した地獄のなかに
足を踏み入れた膝から下が薔薇の男。
何も言うな薔薇が咲いた。


 
カテゴリーの波

カテゴリーの波に揺られ私は砂浜に打ち寄せる。
砂浜に立つ美しき老漁師はゆっくりと網を投げる。

老人のカテゴリーの網は神々しく繊細で、
私はあきらかに網から漏れてゆく。
私は諦めきれず、隠喩になり換喩になり、
何度も何度も打ち寄せる。
それでも私の網にしがみ付く指は解け、
そのうえ、頑ななイデオロギーの波に騙され、
老人の足元遠く消えて行く。
老漁師は網にかかった輝くものを大国様のように背中に背負い,
満足げにひとつ微笑む。

私の足に蟹や海老がまとわりつく。
その中にアリストテレスの顔が揺れる。
そして彼は私を分別する。

大きな波が打ち寄せる。
夏の終わりの青い日差しに照らされて、
いつになく私の悲しみはうつくしき色になる。

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