関取たちと妖精
晴れた日に芝生の上で大の字になることは、なんと気持ちのいいことでしょうか。
そんな時は、いつも、相撲の精霊たちがやって来て、
あれを描け、今度はこんなのを描けと、私の耳に囁きます。
ある日のことです。
私は精霊たちに気付かれないように、そっと、あとをつけました。
いくつもの森を通りぬけました。
木漏れ日さえ届かない静けさのなか、
精霊たちは振り返り、全てを承知していたように、私を招き入れました。
驚いたことに、そこには あの話題の横綱、貴乃花が立っていたのです。
彼は私の手を握りしめ、言いました。
「私が引退したあとは あなたが横綱です。」
私は訳もわからず、その手を握り返し、「わかりました。」と叫んでいました。
その声は、暗く淀んだ森の中を なんどもなんども、こだましました。
そんなわけで、私は、今、まわしをつけた状態でこの文章を打ち込んでいます。
後ろでは、ちゃんこを囲む精霊たちの声が賑やかです。
森の夜は深く深く更けてゆきます。

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