亀の重さ

岩陰で眠り、眠りが足りれば、泳ぎだし、餌を漁る。
後は、人間が見れば、死んでいるのかと思うほど、じっと佇んで一日を終わる。
それを千年万年繰り返すと、亀の心に諦念が溜まります。
その諦念の重さを量るのがこの男です。
人々は畏敬の気持ちを込めて彼を見つめます。
その目は、いつの日か、自分の心のやりきれない絶望を量られることへの憧れに満ちているのです。

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