謎の女

その女がくれたのは掴み合いをしている、あるいは抱擁している、2人からなる人形だった。
「これを毎日、供えて下さい。」
女は白く丸い粒がいっぱいに詰まったガラス瓶を男に渡した。
男がそれを供えると、人形の背中から光のようなものが放たれた。
翌日、隣に住むK氏がやってきた。
ずかずかと、人形のある部屋まで入り込むと、供えられた白い粒を指差して、
「それだけはやめてくれ。」
K氏はそれだけ言って帰っていった。
男は瓶の中の白い粒を一つ残らずトイレの便器へ捨て、水を流した。
すると、白い粒は渦を巻きだし、二つの顔に変わっていった。
はっきりと、それは女とK氏の顔になった。
二つの顔は互いに何かを囁きあい、くすくす笑いながら、下水管に吸い込まれていった。
男は急いで、人形のある部屋へもどった。
しかし、人形はどこを探しても見つからなかった。

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