ラスベガス
先日のことでした。近所をふらふらと目的もなく歩いていました。
いつのまにか、古びたマンションの駐車場に迷い込んでいました。
木と木の間から、何やらこの場にふさわしくない光が差し込んでくるのです。
目を凝らし、それが何なのか、はっきり確かめるのに、しばらくかかった気がします。
それは紛れもなく、あの有名なラスベガスの輝くイルミネーションでした。
胸が熱くなったの憶えています。恥ずかしい話ですが、少し涙しました。
こんな、取るに足りない貧しい1人の日本人にも、ラスベガスは慈悲深い誘惑の手を差し伸べてくれるのです。
賭け事に興じる美しく着飾った紳士淑女たちのざわめきが聞こえます。
転がるダイスの音。
ディーラーがカード配りながらの気の利いたジョーク。
そして、笑い声。
回転するスロットマシーンのリール。
ジャックポットの踊る文字。そして溜息。

束の間の幻影でした。
日本人が金を手にすると、どうしてラスベガスに行くかがはっきり分かったような気がしました。
ありがとう、ラスベガス。
待ってろよ、ラスベガス。

目次へ
next