天邪鬼

お寺に行くと、お堂の中に異国の武将姿の憤怒の形相の男に、
踏みつけられた天邪鬼が苦しそうにうずくまっている筈です。
お堂が火事になると寺の人々は重たい台座から武将姿の彫像を引っこ抜き、
他の仏像と一緒に安全な場所に避難するのだそうです。
天邪鬼はというと台座と一体となった造りのため燃えるお堂と共に、
灰になってしまうそうです。
その時、燃え上がるお堂の中を覗くと自由になった喜びで、
歌うような、踊るような、走り回る天邪鬼を見ることができるそうです。

子供のころ箱ごと燃やしたマッチを見ながら恍惚となった私の心の中に、
小躍りしながら走り回る天邪鬼が確かにいたような気がします。

目次へ
next