稲荷
日本では、たとえそこが都会の真ん中であっても、
稲荷と呼ばれる場所には狐の像が無闇に溢れています。
民俗学者なら、それが何を意味するか、遠い過去に遡って、その根源を質すでしょうが、
私の考えでは過去のそれが生まれたときの真実よりも、
それが今、何を目指しているのか、というほうが大切に思えるのです。
だから、私は狐の像にこれからの希望を問うてみるのです。
もちろん、石でできた狐が答える訳がありません。
でも、石でできた像だからこそ、私の執拗なたわ言を
最後まで忍耐強く聞き流してくれるのです。

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